11月26日(火) 渋谷駅から徒歩数分のところにある高級ホテルで開催された
和装着付コンテストに出演した佐藤文子のレポートをご紹介します。

渋谷にあるホテルさんにて、着付技術選手権の留袖モデルをやらせて頂きました。
オーディションの時の質問事項の中に、和装モデルの経験はありますか?と、
貧血は起こしたりしますか?という質問があり、
和装モデルは未経験であることと、たまに貧血を起こす旨を正直にお伝えしていました。
その後、有難く合格の知らせを頂き、初めての和装のお仕事をとても楽しみにしていました。
当日、私のペアの選手の方は、去年のリベンジにエントリーされ、三重県から
夜行バスで来られた方で、とてもお話ししやすく、笑顔が素敵な優しい印象のお人柄の方でした。
私も一緒に優勝を目指したいという気合いが大きく入りました。
しかし、本番では大勢の観客の前のステージ上で、まさかの貧血で倒れてしまうという、
本当に大変な事をやらかしてしまいました。
本番直前の舞台裏でも、立ちながら待っている時に少し気分が悪くなってしまい、
本番に備えて、念の為に椅子をお借りして、お水も頂いて休ませてもらっていました。
しかし、やはり本番も立ち続ける事が限界に達してしまい、
競技が始まって早々に意識を失い掛けて、選手の方に持たれ掛かってしまい、
椅子が運び込まれ、座らされてしまいました。
他の方は全員競技を行っているのに、この状況がとてもヤバい事だと感じていました。
それでも、目は開けられないし、吐き気もするし、立ち上がる事も話す事も出来なくて、
選手の方やスタッフの方の声も微かに聞こえる程度で、
自分をコントロールする力が全く出せない状態になってしまいました。
私はお水を渡され、乱れた呼吸を精一杯整えようとするも、選手の方が着物を緩め、
棄権の方向でスタッフさんと会話されているのが微かに聞こえていました。
本当に辛くて、悔しくて、悲しくて…
それは、私のちっぽけなプロ意識なんかではありません。
選手の方は、決して安くないエントリー費を払い、一年間掛けて練習を積まれ、
この日に賭けた思いを持ち、遠方から来られたのです。
私のせいで台無しになんてしたくない。
代わりのモデルさんがいらっしゃるなら、
直ぐに私を下げて、その方に参加して頂きたい気持ちでした。
しかし、当然そうも行きません。
私は退場する様に促されましたが、それだけはしたくないと思い、
涙を堪えながら、『やらせて下さい!』とお願いしました。
その時点で他の選手の方々より大幅に出遅れてしまいましたが、
途中椅子に座ってしまいながらも、何とか最後まで着付けて頂く事が出来ました。
審査中も立ち続ける事が出来ず、私一人、座ったり立ったりの状態でしたが、
最後のウォーキングまで必死に笑顔でどうにか頑張りました。
控え室に戻って、選手の方に、何度も何度も頭を下げて謝りましたが、
謝りきれるものではありませんでした。
それなのに、選手の方は嫌な顔一つせずに、私の身体を心配して下さり、
『しんどいのに頑張ってくれてありがとね!短い時間だったのに
最後まで着付けられただけでも凄い事やと思ったわ!また来年お会いしましょうね。』と、
とても優しくおっしゃって下さいました。
涙が出ました。
ペアを組むモデルは、当日、抽選で決まります。
私のせいで、貧乏くじを引いてしまった様なものなのに、
規定通りの時間があれば、もっと満足のいく仕上がりになっ事は間違いないのに…。
そう思うと申し訳無くて、胸が痛くて、悔しくて悔しくて仕方がありませんでした。
自分が痛い目に遭う事より、自分のせいで誰かが犠牲になってしまう事ほど辛いことはありません。
私はこの経験を機に、今まで以上に体調管理には気を付けて、鉄分を多めに摂取しようと決めました。
私にとって、肉体的以上に精神的にとても辛いお仕事となってしまいましたが、
この日の仕事は一生忘れることが無い経験となりました。
ペアの選手の方には多大な迷惑を掛けてしまいましたが、
沢山のハプニングの中で着せて頂いた私自身が感じた、
選手の方の優しさや思いやり、そして熱心さという素晴らしい人間性で、
絶対に素晴らしい技術者になられる方である事を確信しています。
来年の選手権での入賞と、今後の更なるご活躍を心から願っています。
この度は、関係者の方々への深い感謝の気持ちと、お詫びの気持ちでいっぱいです。
佐藤文子
(※ニュースブログ担当者より※)
いつもご愛読ありがとうございます。
さて、本ブログの原稿を佐藤文子より受け取った後、果たして掲載するべきか否か、
正直、悩みました。
そもそも本ブログは所属モデルから、現場の生き生きとした様子や
華やかなドレス姿の写真を弊社PCあてに、あくまで任意で送ってもらい、
モデルの仕事の楽しさや、ブライダルモデルの存在意義を
より多くの方々にお披露目することを目的としてスタートしたものです。
ここまで、ある意味赤裸々に綴った原稿を受け取ったのは
本ブログをスタートさせ足かけ五年、初めてのことでした。
大いに、悩みました。
佐藤文子は駆け出しではありません。
数々のブライダルフェア、撮影等々、幾多の出演歴があります。
クライアント様からお褒めの言葉もたくさん頂いています。
人並み以上のプライドもあるでしょう。
にも関わらず、ここまで正直に書いてくれた佐藤文子の気持ちを大切にしたいと思い、、
掲載にすることにいたしました。
人間、誰もがミスをすることがありますし、どう頑張っても体が言うことを聞かない時もあります。
無論、私たちは所属モデルに対し、常日頃体調の管理の徹底に関して、口を酸っぱくして伝えています。
思わず笑ってしまうようなポカ、決して笑えないミス・・・。
色んな事件、事故、人、を思い出しました。
新規クライアントの大規模なブライダルフェア当日、40度近い高熱で
ベッドから起き上がれないにも関わらず、どうしても出演すると言って
意地を張るモデルを早朝から電話口で辞退させるべく説得し続けたこと。
逆に、手首の激痛でブーケを持つことが出来ないと訴えて来たモデルに
「貴女の代わりはいないのだから、明日は必ず仕事に行って下さい」と
言って電話を切り撮影現場に行ってもらったこと。
etc. etc...。
モデル事務所としては、何も好き好んで、ある意味「恥」をさらけ出す必要はないのですが、
今年も余すところ一カ月となった11月最後の週末、
クライアント様には弊社モデルの仕事に対する責任感の強さをご理解いただきたく、
所属モデルの皆には、改めて、益々意識を高く持ちレッスン、仕事に励んで欲しく、
敢えて掲載させていただきました。
佐藤文子の勇気に改めて感謝します。
長文失礼いたしました。
(ニュースブログ 担当者)
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同じモデルとして、その気持ちが痛いほどに分かるからです。
私たちが普段着せてもらえる衣装は、ドレスにしても、和装にしても、
豪華であればあるほど重く、
綺麗に着付けるためにギューギューに締め付けられる。
痛くてもきつくても、ただただみんなの笑顔が見たくて我慢することもある。
しかもこのような着付けの大会では微動だにできないんですよね。
そんな大会で、貧血を起こしながらも最後までやりきった文子ちゃんはすごいなぁって思います(*^_^*)
お疲れ様でした!!